例年にも増して、寒暖差がひどい上に、暑くなるのが早いですね。
3月にしてすでに夏のような日差しにさらされるとは、先が思いやられます。
とはいえ、良い季節ですし、東京は桜も開花して見頃を迎えていますので、春を満喫したいものです。
今レッスンをしているスタジオから歩いて10分ほどのところに、立派な桜並木があるのですが、この前歩く機会があり、「メンデルスゾーンの『春の歌』もこの光景に合いそうだけど、ブラームスの『ワルツ』も合いそうだなぁ」なんてことを考えながら、桜を愛でていました。
そこで今回は、発表会での演奏曲に選ばれることも多い、ブラームスの『ワルツ』を美しく、気持ち良く演奏するコツを考えていきましょう。
このワルツの愛称は「愛のワルツ」
ブラームスの『ワルツ』というと、この「Op.39-15」が一番有名ですが(Eテレの2355でも使われていますね)、実は他にも15曲あります。
元はピアノ連弾用に書かれたワルツ集で、全16曲の中の15曲目がこちらの曲。
「愛のワルツ」という愛称もあるそうですので、柔らかく上品に演奏したいところです。
連弾用に書かれた楽譜では、A dur(♯3つ)なのですが、ブラームス自身が編曲したピアノ独奏版では、弾きやすさなども考慮されて、As dur(♭4つ)に移調されています。
クラリネット用の編曲では、ピアノ独奏の調で書かれていますが(原曲通りだと、♯が5つになってしまいますからね)、調が変わると曲の雰囲気も大いに変わりますので、連弾版と独奏版では、愛のタイプが違うイメージでブラームスも編曲したかもしれません。
♭4つ(クラリネットだと♭2つ)の響きから受ける印象を、音楽に反映させて演奏していきたいですね。
春にぴったり!クラでブラームスの『ワルツ』
それでは、いよいよ演奏のコツです。
今回も、おなじみの「クラリネット名曲31選」の楽譜を使用します。
曲全体の作り方
この曲は、同じメロディーが何度も繰り返されますので、全てを同じように吹いてしまうと、ただ淡々と過ぎていってしまいます。
強弱の指示も、ほぼ似たような感じですので、それを真に受けず、自分なりのストーリーを考えて演奏しましょう。
音楽表現として、
- メロディーの歌い方を変える
- フレーズの入りの強弱を変える
- フレーズ内の強弱の幅を変える
などで、曲に新鮮さを持たせることができますので、「どこをどのように吹きたいか」ということを、しっかり意識するようにしていきたいですね。
吹き方の注意点
メロディーは、付点四分音符と八分音符3つのリズムが基本になって進んでいきますが、「付点四分音符と八分音符が1つのかたまりに聞こえるように吹こう」「表情をつけて吹こう」と意識しすぎると、
- 付点四分音符を押してしまう
- 付点四分音符が間延びして、八分音符が遅れてしまう
ということが起こりがちです。
押しているように聞こえるのは、スラーをつなげようと気にしすぎて、息のスピードが変わってしまうからです。(出だしが遅く、その後速くなる)
解消方法としては、音の立ち上がりから、クリアに出るように心がけましょう。
また、歌い込みすぎると、2拍目の裏の拍がついつい後ろにずれてしまうので、「拍はきちんとはめつつ、音楽表現をするにはどうしたらいいか」を考えながら、メトロノームに合わせて練習するといいですね。
アルペジオの吹き方
途中には十六分音符、最後に三連符のアルペジオが出てきます。
「うぉっ!アルペジオだ!」と身構えず、ピアノのメロディーの裏で、しれっと美しく吹き切りたいところです。
先程までメロディーを吹いていた気持ちをそのまま持ちながら、流れるような演奏が意識できるといいですね。
強弱は、ピアノとピアニシモですが、怯えて息をあまり入れずに吹くと、きれいにスラーがかかりませんので、特に吹き出しの下の音(アルペジオの最初の音)はたっぷりした息で鳴らし(強く、ではなく太く)、その勢いですーっと上まで上がれるように、繰り返し練習をしましょう。
必死で上っていくようなイメージで吹いてしまうと、低い音が弱く、高い音が強く聞こえてしまって、不自然な仕上がりになります。
また、のびやかさを意識して吹ければ、ピアノ・ピアニシモより多少上の音量になってしまっても、雰囲気は損なわずに演奏できますので、ピアノのメロディーが聞こえる範囲で、ある程度「吹きやすさ」を優先しても構いません。
アルペジオが始まって3小節目は、パターンも変わりますし、指もちょっと嫌な感じなのですが、落ち着いて、各拍のあたまの「ミ♭・レ・ド」がメロディーと同じであることを意識して演奏できるといいですね。
この箇所以外でも、ピアノのメロディーと、ところどころ同じ音を鳴らしていることを気にかけながら吹けると、演奏がもっと楽しくなります、
優雅に吹き切ろう
ワルツは、メヌエットと比べると軽快ではありますが、とは言え豪華なドレスを着て踊るための曲です。
優雅さは欠くことができませんので、演奏中はそのことを常に頭の片隅に置いておくようにしましょう。
またしっかりと曲のイメージを持って、どのようにそれを表現すればいいか、どうやったら伝わる演奏になるか、という点にも、磨きをかけていきたいですね。
同じメロディーが繰り返される曲だからこそ、奏者によって仕上がりに差が出ます。
自分らしい『ワルツ』が演奏できるよう、楽しみながら練習を進めていきましょう。


